救助犬目指し奮闘 鎌ケ谷の新たな“家族”とともに 原発事故後、南相馬で保護

飼い主の石川さんと救助犬を目指し奮闘するアキ=浦安市高洲
飼い主の石川さんと救助犬を目指し奮闘するアキ=浦安市高洲

 東日本大震災では多くのペットが被災した。東電福島第1原発事故の影響を受けた福島県南相馬市で飼い主と離れ離れとなり、ボランティアに発見・保護された犬が、千葉県内の新たな飼い主と出会い、災害救助犬を目指して日々訓練を重ねている。(社会部・町香菜美)

 「アキ、おいで!」

 練習場で石川野菊さん(41)=鎌ケ谷市=が呼び掛けると、がれきの橋を果敢に駆け渡る。

 「お手」

 まっすぐ石川さんを見つめて前足を手に重ねた。

 雄のミックス犬「アキ」(8)は福島県南相馬市で育った。震災では、原発事故の影響で住民の多くが町を離れた。震災1週間後、昔から動物が好きで、被災地での家畜の餌やりボランティアを志願した石川さんが訪れた同県は「ゴーストタウンだった」(石川さん)。

 家屋や建物はそのままなのに人影がない。そして、そこには、リードにつながれたまま“家族”がいた家を見つめて亡くなった犬や、食べ物が尽きて餓死した猫の姿があった。

 厳しい状況の中、アキは震災から1カ月後、被災ペットを保護する預かりボランティアに同市内の民家で発見・保護された。

 人気のある小型犬や猫はすぐに引き取り手が決まるが、アキのような大型犬はなかなか見つからない。飼い主が決まるまで一時的に保護するスペースも満杯だ。そんな状況を知った石川さんは保護されて1カ月のアキを引き取った。その後、元の飼い主も見つかったが、避難先ではペットが飼えず、アキは正式に新しい家族として迎えられた。

 もともとドッグトレーナーを目指していた石川さん。2015年からはアキとより絆を深めようと、災害現場で活躍する救助犬を目指して「NPO法人日本救助犬協会浦安チーム」(西原幹夫代表・浦安市)で訓練を始めた。

 おとなしく、めったにほえない温厚な性格。「要救助者の存在を声で知らせる必要がある救助犬には向いていないのでは…」(石川さん)。不安のある中で挑んだ昨年11月の救助犬の認定試験で、アキは一度も練習したことがない捜索の実技で隠れた人を発見してみせた。現在は、次の難関に向け訓練の日々を送る。

 「本当は救助犬が活躍するような事態にならないほうがいい」というのが石川さんの本音だが、「いざとなったらアキと一緒に人を助けられれば」と優しくアキをなでてみせた。頼もしい“新しい家族”は、きょうも奮闘している。


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