千葉工大生製作の超小型衛星、来春宇宙へ 測位・地磁気観測など多機能な「KASHIWA」 設計から手続きまで学生主体

製作した千葉工大の学生たち。手前は打ち上げる機体と同じ機能を持つ試験機=6日、習志野市の同大
製作した千葉工大の学生たち。手前は打ち上げる機体と同じ機能を持つ試験機=6日、習志野市の同大
千葉工大の学生が製作した衛星「KASHIWA」。向かって左面には2台のカメラやアンテナ、他の面には発電用のソーラーパネルが設置されている(千葉工業大学提供)
千葉工大の学生が製作した衛星「KASHIWA」。向かって左面には2台のカメラやアンテナ、他の面には発電用のソーラーパネルが設置されている(千葉工業大学提供)

 千葉工業大学(習志野市)の学生が製作した超小型衛星が来年春、宇宙に飛び立つ。重さ約1キロ、1辺10センチの立方体で、名前は「KASHIWA」。設計だけでなく打ち上げ認可など関係機関との手続きも学生主体で進めてきた。小さな機体には、測位や地磁気の観測など複数の機能のほか、山火事を耐えるカシワの木の強さにちなみ、困難を乗り越え宇宙を目指す思いが込められている。

 学生主体の衛星製作は同大で初。作ったのは「高度技術者育成プログラム」に参加する有志学生の団体「GARDENs」。単位取得はないが、約40人が同大惑星探査研究センター研究員の補助の元、放課後や長期休暇に活動している。

 今の4年生が昨年から取り組み、完成させた。振動や温度への耐性など基準を満たし打ち上げ認可を獲得。機体は先月、宇宙航空研究開発機構(JAXA)に引き渡され打ち上げを待っている。

 機能は複数あり、地上と交信する無線のほか、2台のカメラで対象物との距離を測定できる。将来的に、宇宙空間に残る衛星やロケットの破片のような「宇宙ごみ」の発見・回収技術への活用が期待される。

 さらに、地磁気を観測して音声データに変え、地上でメロディーとして聴ける機能も。回転しながら動く衛星と、地軸との角度によって音階が変わる遊び心ある仕掛けになっている。

 製作を主導した工学部機械工学科4年の関口智礼さん(22)は「音への変換機能はスケジュールから遅れていて、実現できるか不安だった。実際に出来上がった音が聞こえた時よかったと思った」と達成感をにじませた。卒業後は海外の大学に進学するが9月までは運用を見守るという。

 衛星は、来年春に米国スペースエックス社のロケットで打ち上げられ、上空約400キロの国際宇宙ステーション(ISS)へ。ISSの装置から放出されると、約50センチの針金状のアンテナを展開。秒速約8キロで衛星軌道を回り90分間で地球を一周する。大気圏に突入して役目を終えるまで、約1年半運用される見込み。

 GARDENsは各学年で衛星製作に取り組んでおり、2030年までに最大9機の打ち上げを目指す。


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