「移動スーパー」大多喜町で始動 買い物弱者の利便向上 生鮮品など対面販売

 大多喜町で30日、買い物の足がなくて困っている高齢者などのため「移動販売車」が始動した。地元の小売業「宍倉」が事業主体となり、生鮮三品などを陳列した車を走らせる。停留所では早速、買い物と会話を楽しむ高齢者の姿が見られた。

 移動販売車は「LEO移動スーパーまごころ便」。ピンク色の荷台が目印で、毎週平日、町内の計5コースを巡る。停留所には数十分停車し、惣菜や日用品など約千品目を対面販売する。価格は同社が経営する他のスーパーと同じ。

 国の「地域自立型買い物弱者対策支援事業」を活用した試みだ。買い物機会を提供するミニ店舗、移動販売、宅配事業の立ち上げ費用を支援するもので、事業化は県内では睦沢町に次ぎ2例目という。

 大多喜町ではスーパーなどが街中に集中し、車を運転しない周辺部の高齢者には買い物が難しかった。町はタクシー運賃の一部を補助する外出支援サービス事業などで支援してきたが年々、補助額が増加していた。

 町産業振興課は「実際に物を見て買いたいという町民アンケートに寄せられた声に対応できる。外出支援サービス事業のコスト削減にもつながる」と移動販売車の登場を歓迎する。

 この日、同町久我原の停留所には十数人の高齢者が訪れた。女性(76)は「買い物はもちろん、近所同士で会話もできて命の洗濯になる」と笑顔を見せた。

 移動販売事業への参入について、同社の宍倉弘哲社長(53)は「大多喜は創業の地。以前、開いていた店では近所の人を車に乗っけて買い物に来ていた人が何人もいた。困っている人の役に立ちたい」と理由を説明。今後はリピーターの確保が課題になるとした。

 移動販売車では、煮物やあんパンなど高齢者に喜ばれる品ぞろえを強化しているという。


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