施設のシンボルを未来に残そうと、いすみ市にある障害者支援施設「いすみ学園」(岡部一邦理事長)が、所有する東急電鉄池上線の旧車両「デハ3455」の修繕費を募るクラウドファンディング(CF)を始めた。来年1月15日までに330万円が目標だ。
デハ3455は昭和7(1932)年ごろ製造されたとみられ、戦後長らく、都内の池上線で活躍。いすみ学園開所と同じ84年に引退した。東急社員だった施設利用者の保護者の働きかけで翌85年、もう1両の同形車両とともに同施設へ寄贈された。
利用者が休憩や食事をする場所になり、電車に乗る練習や職員の会議室としても活用。もう1両は実習に来た人の宿泊施設になった。道路に面した目に付きやすい場所に置かれたことから地域の人にも親しまれ、「いすみ学園の名前を知らなくても電車があるところで分かってくれる」(施設職員)。
しかし99年、老朽化して維持できなくなった1両を解体。残ったデハ3455も約10年前に2度目の再塗装をしたが、全体的に腐食が進んで緑色の車体は色あせ、隙間から雨水が入り木の床に穴が空いた。2年ほど前からは一時的な物置になっている。
施設のシンボルであり、施設が地域に溶け込むツールでもあるデハ3455は、なくてはならない存在。利用者が旅気分を感じながら昼食を食べられる空間を取り戻したいとの職員の思いもある。なんとか残していきたいが、施設の修繕もあって車両に回す費用を捻出するのが厳しい状況。CFで多くの人たちに助けを求めることにした。
CFの返礼品には車両塗装体験や車両見学・撮影会などを用意している。同施設は「デハ3455は学園の顔であり共に歩んできた仲間。失うことはできない。未来に残していくために助けていただければありがたい」と呼びかける。
詳細はCFサイト「レディーフォー」(https://readyfor.jp/projects/isumigakuen)。