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原発事故後の放射線被ばくが鱗翅目昆虫に及ぼす影響

    カイコモデルを用いて線量効果関係を明らかに

    令和8年5月19日
    秋田県立大学

    秋田県立大学 生物資源科学部 生物環境科学科の田中 草太 助教[専門:放射生態学](土壌環境学研究室)らの共同研究チームは、福島原発事故後に報告された鱗翅目昆虫の形態異常について、モデル生物のカイコを用いて放射線の直接的な影響を検証しました。本研究では、放射性セシウム(137Cs)の内部被ばく実験およびガンマ線照射実験により、低線量・低線量率被ばくの影響を評価するとともに、外部形態と体細胞突然変異が生じる線量を解明しました。これまで不明瞭であった線量効果関係を明らかにし、福島原発事故後の放射線被ばくによって、鱗翅目昆虫類が直接的な影響を受ける可能性は低いことを示しました。本研究の成果は、福島原発事故後の放射線被ばくが生物と生態系に及ぼす影響をまとめたSpringer Nature英文書籍(オープンアクセス)に掲載されました。

     

    ■概要

    〇福島第一原子力発電所事故により環境中に放出された放射性セシウムの一部は、生物の食う・食われる関係である食物連鎖を通じて長期的に生態系を循環します。これらの放射性セシウムは、生物に対して慢性的な被ばくを生じさせますが、その影響については解明されていません。本研究では、事故後に形態異常が報告された鱗翅目昆虫に対する低線量・低線量率被ばくの影響を評価するため、モデル生物であるカイコを用いた被ばく影響評価を実施しました。

    〇環境中の被ばくを模擬するため、カイコの人工飼料に137CsCl 溶液を滴下し、全幼虫期間を汚染された餌で飼育する内部被ばく実験系を構築しました(図1)。餌から受ける外部被ばくと、餌を摂食することで生じる内部被ばく線量は、それぞれガラス線量計と放射線挙動解析コードPHITS を用いて推定しました。この結果、原発事故後の137Cs 沈着量を上回る汚染レベルの餌を与え続けても、カイコ幼虫の被ばく線量率は、約1mGy/day であり、外部形態には影響が生じないことが明らかになりました。さらに、体色の黒

    い黒縞と体色の白い姫蚕を交配することで、外皮の白斑発生から体細胞突然変異を検出可能なカイコ系統を作出し、形態異常と体細胞突然変異が生じる線量をガンマ線照射により評価しました(図2)。その結果、5 齢幼虫への照射において、80Gy から有意な翅原基の基萎縮が認められました(図3)。また、卵への照射では1Gy から体細胞突然変異が増加することが明らかになりました(図4)。

    〇本研究により福島原発事故後の放射線被ばくが、鱗翅目昆虫に直接的な影響を及ぼす可能性は低いことが示されました。また、低線量・低線量率被ばくが昆虫類に与える影響を検証した数少ない研究であり、原発事故後の放射線被ばくが生物および生態系に与える影響の包括的な理解に資する知見を提供します。

    〇今後は、昆虫類では検証されていない低線量・低線量率被ばくの継世代(次世代)影響について、生殖細胞突然変異を検出可能なカイコ系統を作出することで評価することを目指します。

     

     

    【画像:https://kyodonewsprwire.jp/img/202605299961-O1-Artc814c
    【画像:https://kyodonewsprwire.jp/img/202605299961-O2-OqD9FiyY

    【画像:https://kyodonewsprwire.jp/img/202605299961-O3-YW5tJ29Y

     

     

    【画像:https://kyodonewsprwire.jp/img/202605299961-O4-Wyw4Iu85

     

     本研究成果は、Springer Nature より刊行された英文書籍『Low-DoseRadiation Effects on Animals and Ecosystems II』に、令和8 年4 月30 日に掲載されました。

    〇論文タイトル

    『Radiation Effects on Lepidopteran Insects: Internal and External Exposure Experiments on the Silkworm, Bombyx mori』 (鱗翅目昆虫に対する放射線の影響:カイコ(Bombyx mori)を用いた内部および外部被ばく実験)

    〇著者

    Sota Tanaka, Tadatoshi Kinouchi, Tsuguru Fujii, Tetsuji Imanaka, Tomoyuki Takahashi, Satoshi Fukutani, Daisuke Maki, Akihiro Nohtomi & Sentaro Takahashi

    〇DOI

    https://doi.org/10.1007/978-981-95-5559-8_17

     

    ■研究体制

    本研究は、以下機関の共同研究として行われました。

    田中草太(秋田県立大学 生物資源科学部)

    木野内忠稔(京都大学 複合原子力科学研究所)

    藤井告(九州大学 農学研究院)

    今中哲二(京都大学 複合原子力科学研究所)

    高橋知之(京都大学 複合原子力科学研究所)

    福谷哲(京都大学 複合原子力科学研究所)

    牧大介(千代田テクノル)

    納冨昭弘(九州大学 医学研究院)

    高橋千太郎(京都大学 複合原子力科学研究所)

    図4 皮膚白斑を指標とした体細胞突然変異の検出(矢印)

     

    ■研究支援

    本研究は以下の研究助成を受けて実施されました。

    JSPS 科研費 16J10112

    JSPS 科研費 19K24392

     

    ■問い合わせ先

    <研究に関すること>

    ・秋田県立大学 生物資源科学部 生物環境科学科 助教 田中 草太(たなか そうた)

     TEL 018-827-1612 Email tanaka.sota@akita-pu.ac.jp

     

    <報道担当>

    ・秋田県立大学 企画・広報本部 広報・渉外チーム

     チームリーダー 佐藤 琢麻(さとう たくま)

     TEL 018-872-1521 Email koho_akita@akita-pu.ac.jp

    【画像:https://kyodonewsprwire.jp/img/202605299961-O5-97f6i3O3

     

    情報提供