心と心の会話だった。4月9日のバファローズ戦(京セラドーム大阪)にてサヨナラ負けを喫し、負け投手となり今季2敗目を喫していた高野脩汰投手は翌10日、県営大宮公園野球場で行われたライオンズ戦の練習後、サブロー監督の下に向かった。深刻そうな表情に、監督からは部屋に招き入れられ、じっくりと向き合った。
高野は前夜の悔しい思いの丈を、吐き出すように素直に口にした。サブロー監督は一つ一つの話にうなずきながら、真剣に聞き入ってくれた。そして「信頼をしている。だからこそ大事な場面で意識して使っている」との言葉をくれた。
「そう言っていただけてうれしかったです。じっくりと話をさせていただいて話が聞けて、本当によかったです。いろいろな言葉をいただきました」と高野。
監督のアドバイスは極めてシンプルだった。「信頼をしているのだから、結果を恐れず、おもいっきり自分のボールを投げろ」。ハッとさせられた。マウンドでどこか結果を意識する思いが脳裏を過ぎり、小さくなっている自分がいた。本来の背番号「34」の良さはダイナミックなフォームから繰り出される豪快な投球。先に結果を意識していては、その良さが消える。何も考えずに、打てるものなら打ってみろと腕をおもいっきり振り切るのが最大の持ち味だ。
部屋を出てきた高野の表情は、もう曇っていなかった。迷いは消え、前を向いていた。指揮官の口から出た「信頼」の2文字がなによりもうれしく、背中を強く優しく押してもらえた気がした。
この日のライオンズ戦ではチームの連敗は5で止まった。サブロー監督はなかなかチャンスの場面で結果が出ない若手野手にも声をかけていた。「とにかく初球からおもいっきり振っていけ」。その言葉通りに西川史礁外野手や寺地隆成捕手が躍動した。西川は最終回の好機で初球を振り切って右前打。チャンスを広げ、結果的に劇的な逆転勝利へとつなげた。寺地は二回の先制時にファウルとなったものの初球から振りにいき、ファウルで粘りに粘って11球目をセンター前に弾き返した。ファウルで粘っている中でつかんだタイミングがあった。これが実にチーム38イニングぶりのタイムリーだった。
注目を全方位から浴び、重圧のかかる公式戦のグラウンドでおもいっきりプレーをすることを実践するのは難しい。だからこそ、指揮官としてタイミングを見て選手たちに自ら率先して近づき、想いを伝えるように心がけている。そして成長のキッカケとして成功体験となりうる舞台を用意する。チームは開幕カードに勝ち越して以降、4カード連続で負け越しとなる苦しい日々が続いている。厳しい船出となっているが、決して軸がぶれることはない。苦境を耐え忍び、向かい風が追い風に変わる時までチーム一丸、全員で自分たちを信じながら、おもいっきりプレーをしていく。
(千葉ロッテマリーンズ広報 梶原紀章)