背番号「23」は一打席に懸ける強い気持ちを感じる選手だ。プロ15年目の石川慎吾外野手は一振りに全てをぶつけている。
「強い想いを出しながらやっているつもり。マジでいつだって、これが最後の一打席かもしれないと思いながら打席に立っている」と石川慎吾は言葉を噛みしめるように話す。
昨年は14試合に出場して3安打。悔しい結果に終わった。それだけにシーズンオフから背水の思いで練習に取り組み、チャンスが来れば逃すまいと常に構えてきた。
「結果が求められる立場であるのはわかっている。シーズンの早い段階でこういう風に呼んでいただいた。監督の気持ちに応えたいという気持ちでいた」と言う。
4月16日のナイトゲームの試合後に、翌17日の仙台のゲームからの1軍昇格をマネジャーから告げられると夜遅く、荷物出しのためZOZOマリンスタジアムを訪れた。もうチームメートのほとんどが帰宅していた時間帯。監督室に向かうと、まだ明かりが灯っていた。ドアをノックし、顔を出すとサブロー監督の姿があった。「よろしくお願いします」とあいさつをした。サブロー監督からは「なんでおるねん? あしたからやぞ」と笑顔で返された。そして「結果だけやぞ。結果を出すだけや」とハッパをかけられた。その言葉をしっかりと胸に刻み、翌17日早朝に東北新幹線に乗り込み、仙台へと向かった。17日のイーグルス戦(楽天モバイル最強パーク宮城)では早速、5番DHでスタメン出場をすると2安打と気を吐いた。そして迎えた4月21日のバファローズ戦(ZOZOマリンスタジアム)。3番DHでスタメン出場すると1対1で同点の五回、無死一、二塁の絶好の場面で打席が回ってきた。バントも頭をよぎった中で、ベンチからは「打て」のサインが出た。
「いろいろなことを考えた。もちろんマイナスのことも頭をよぎった。そんな中での打てのサイン。中途半端に打ちにいくのだけはやめようと。強く振れるゾーンにボールが来たら、おもいっきり強く振ろうと。それだけでした」と振り返る。
カウント2ボールからの3球目。インコース気味のツーシームを思いっきり叩くと打球は気持ちを乗せて左中間へと伸びていった。勝ち越しの3ラン。自身、2024年5月18日のファイターズ戦(ZOZOマリンスタジアム)以来のうれしい本塁打となった。
試合後、サブロー監督も「彼も去年、そして今年もオープン戦から苦しんできてファームで必死に成績を残してきた中で1軍に上がってきた。そしてこういう感じで、いい結果が出てボクもうれしいです」と目を細めた。
ファイターズ、ジャイアンツと渡り歩き、マリーンズにたどり着いた苦労人。打席で醸し出す独特の雰囲気とその積極的なスイングはファンを虜(とりこ)にする。打席に立つと大きな歓声に包まれる。「うれしいですよ。歓声をいただいて。こんなボクにこんな歓声をいただけるだけうれしい。若い子たちみんな頼もしい。シーズンはまだまだこれから。一つずつ頑張っていく」と石川慎吾はスタンドのファンの声援に手を振りながら応える。
4月27日に33歳になった。若手の多いチームにあって、その経験と野球に対して真摯に向き合う姿勢は貴重だ。侍のようにバットに魂を込めて、これからも一打席、そして一振りに全てを込める。
(千葉ロッテマリーンズ広報 梶原紀章)