【北京共同】北京冬季五輪スピードスケート女子の高木美帆(27)が13日、本職ではない500mで望外の銀メダルをつかんだ。滑り終えてガッツポーズを繰り返し、真っ先に手を合わせたのは、リンクサイドのヨハン・デビット・コーチ(42)。歯車がかみ合わず悩ましげな表情の目立った高木美が、個人3種目目で「純粋にうれしい」と満面に笑みを浮かべた。
コロナ感染でチームを離れていた理解者が約10日ぶりに復帰し、躍動感がよみがえった。準備運動から高木美に寄り添い、声を掛け続けた。「肩に力が入っているぞ」。5種目挑戦、複数金メダル、日本選手団主将―。重圧を背負うエースの異変を見逃さない。力みの抜けた高木美は抜群の出足から伸びやかに加速し、自身も驚く37秒12でゴールした。
2015年にスケート王国オランダから日本のナショナルチームのコーチとして来日。この出会いが、前年のソチ五輪代表を逃すなど停滞していた高木美を変えた。厳しく合理的な練習に、「自分を信じろ」と背中を押す言葉。迷いの消えた天才少女の姿を、関係者は「水を得た魚だ」と表した。
そんな恩師が開幕前に不在となり、優勝候補筆頭だった7日の1500mは2位。もどかしさを抱えていただけに「ちょっとした変化に気付き、気持ちを奮い立たせてくれるヨハンの存在の大きさを、改めて感じた」との言葉に実感がこもる。
メダルが決まった瞬間は小躍りしてデビット氏に駆け寄り、拳を合わせた。世界屈指の万能選手が「他種目とは全然コントロールの仕方が違う」と語り、出ることの意味を最後まで自問した500m。そんな種目が自らの苦境を救い「挑戦して良かった」と声を弾ませる。
15日は団体追い抜きで2連覇、17日は1000mで悲願の個人種目金メダルに挑む。