安心して暮らせる循環型社会を構築
三方を海に囲まれ、首都圏にありながら農林水産業が盛んで豊かな自然が残る千葉県。一方で、産業の発展により、さまざまな環境の課題も発生している。本年は千葉県誕生150周年。環境の日を迎え、本年度着任した千葉県環境生活部の井上容子部長に、千葉県が200年、300年と発展を続けるために必要な課題解決方法や持続可能な循環型社会の構築などについて話を聞いた。
ー近年、SDGsなど環境に配慮した持続可能な社会の構築が求められています。千葉県環境生活部長に着任した感想をお願いします。
「『環境』と一言で言っても、身近な生活環境や自然環境から、温暖化など地球規模の環境まで、非常に範囲が広いと改めて認識しました」
「『環境保全』というと、とかく経済活動を阻害していると言われがちでしたが、カーボンニュートラルに向けた社会の動きが急速に進んでおり、環境と経済の好循環が認識されるようになってきたと感じています」
「一方、有害鳥獣や外来生物への対応など継続した課題も依然として多く、こうした状況も踏まえて、千葉県の豊かな自然環境の恵みを次世代にしっかり引き継いでいくため、安心して豊かに暮らせる環境づくりに努めていきたいと思います」
時代と共に課題変遷
ー千葉県にはどのような環境問題があるのでしょうか。
「千葉県では、昭和30年代以降の急激な工業化と都市化の進展に伴い、大気汚染や水質汚濁、地盤沈下などによる生活環境の悪化、開発による身近な自然の改変、良好な自然景観や貴重な動植物の消失などといった問題が生じました。昭和40年代になると、自動車などによる道路沿道の大気汚染、一般家庭などの汚水を原因とする都市河川の汚濁や廃棄物問題、身近な生活空間からの自然の減少など、都市・生活型のライフスタイルに起因する環境問題が新たな課題となってきました。昭和60年代からは世界各国で地球温暖化に対する危機感が高まり、本県では平成5(1993)年に『千葉県地球環境保全行動計画』を策定しました」
「また、首都圏に位置し、比較的平坦な丘陵地が多いという県土の特性や道路網の整備を背景に、県外からの建設残土の搬入や廃棄物の不法投棄の大量発生、近年では不法自動車ヤードが問題となりました。昨今は、再生資源として有価で取引きされる使用済みの機器類や金属・プラスチック等のスクラップの保管等を行う事業場において、騒音・振動や火災など周辺への影響を及ぼす事例が発生しており、適正な管理が求められています。一方で、社会環境の変化による捕獲の担い手の減少や耕作地の放棄、飼育していた動物の放棄などにより生じた有害鳥獣や外来生物の増加は、生態系への影響ばかりでなく、農業や生活環境にも問題を生じさせています」
計画的に環境保全
ー環境問題は改善へ向けて前進していますね。
「本県では、昭和40年代から公害防止や自然環境の保全を目的とした条例を制定し、対策を進めるとともに、平成5(1993)年に県民の環境に対する行動規範として『千葉県環境憲章』を、平成7(95)年には、県の環境保全に関する基本的な事項を示した「千葉県環境基本条例」を制定しました。
「そして、条例に基づき『千葉県環境基本計画』を策定し、都道府県では最初となるいわゆる残土条例、再生土条例を制定するなど、規制や監視パトロールの強化などの環境の保全に関する施策を総合的かつ計画的に推進してきたことにより、大気環境や水環境に一定の改善が図られたほか、廃棄物の不法投棄が大幅に減少するなどの成果を上げてきました」
「そのような中、現在は、令和10(2028)年度までを計画期間とする第三次千葉県環境基本計画において、『地球温暖化対策の推進』『循環型社会の構築』『豊かな自然環境の保全と自然との共生』『野生生物の保護と適正管理』『安全で安心な生活環境の保全』の5つの基本目標を掲げ、『恵み豊かで持続可能な千葉県』の実現を目指して取り組んでいるところです」
「本年(23年)3月には、千葉県地球温暖化対策実行計画の改定や千葉県カーボンニュートラル推進方針の策定により2050年カーボンニュートラルの実現に向けて動き出しました。本年度は、『有害鳥獣捕獲協力隊』を立ち上げ、野生鳥獣の新たな捕獲人材の確保を進めるほか、金属スクラップなどの有価物の屋外保管等について必要な規制を行う条例の制定を目指すなど、さまざまな取り組みを進めていきます」
環境と経済の両立へ
ーさまざまな事業に取り組む中で懸案はありますか。
「本県は、太陽光発電の発電出力が全国第2位で、洋上風力発電でも風況が優れた太平洋岸の沖合3海域で導入に向けた手続きが進められており、再生可能エネルギーの導入に当たってのポテンシャルが高い県です。また、港や消費地に近く、リサイクル資源の集積場も多くなっています。本県の地域特性を踏まえ、環境に与える影響を最小限にするための環境アセスの実施や条例による規制等により、豊かな自然環境や生活環境を守るとともに、経済活動との両立を図っていく必要があります」
「さらに、積極的な環境保全の行動が経済を活性化させ、経済が発展することによって環境保全も促進され、環境への意識がさらに高まるというように、環境と経済の好循環をいかに創出し、実現していくのかが課題です」
「また、カーボンニュートラルの実現に向けて、県民、事業者、行政など全ての主体が一体となって、企業の技術開発、交通・物流の脱炭素化、CO2吸収源の森林整備など、様々な分野にわたる横断的な施策に取り組んでいくことが必要となっています」
「県民、事業者、NPO、学校、行政などが各主体の持つ特性を生かし、連携・協働していくネットワークの構築や、様々な関係者が環境と人との関わりについて正しい理解をした上で、主体的に考えて実践するよう、意識改革や行動変容につながる取組を推進していきたいと考えています」
脱炭素・循環型社会へ
ー千葉県はどのような姿の持続可能な環境を目指しているのでしょうか。
「緑豊かな房総丘陵、九十九里浜をはじめとする美しい海岸線、様々な生物が生息・生育する里山・里海など、房総の自然豊かな環境を次の世代へ引き継いでいくため、『恵み豊かで持続可能な千葉』の実現を目指しています」
「健全な生態系を維持・回復し自然と人間との共生を図ること、廃棄物の再資源化や天然資源の消費の抑制などによる『もの』を大切にする循環型社会を築いていくこと、脱炭素社会を実現すること、これらを県民・事業者・行政などさまざまな主体が一体となって進めていくことが必要です」
環境問題に関心深めて
ー県民へのメッセージをお願いします。
「現在、私たちが直面している地球温暖化をはじめ、生物多様性の保全や廃棄物問題など多くの環境問題は、私たちの日常生活や事業活動における環境負荷が自然の再生能力を超えてしまったことに起因しています」
「こうした状況を改善し環境を保全していくためには、自らのライフスタイルや事業活動を環境に配慮した形へ転換するなど、具体的に行動していくことが必要です。私たち一人ひとりが環境負荷の少ない製品を選択する、ごみの分別・リサイクルに取り組むなど身近なできることから取り組むことで大きな力となります」

県では毎年環境月間に合わせてポスターの募集を行っている
「6月の環境月間には食品ロス削減に向けたキャンペーンやフードドライブなど環境保全の取組が実施されますが、千葉県誕生150周年の今年はさらに、年間を通して里山などの豊かな自然や多彩な文化資源を生かしたさまざまな記念事業が県内各地で開催されます。千葉県の豊かな自然を次の世代に継承するため、環境の日を機に環境問題への関心を深めるとともに、これらのイベントなどへの参加を通じて続いていく未来を考え、積極的に行動していただきたいと思います。御協力をよろしくお願いします」
環境の日 1972年6月5日にスウェーデン・ストックホルムで開催された「国連人間環境会議」を記念して定められた。国連では、日本の提案を受けて6月5日を「世界環境デー」と定めている。また、91年から6月を環境月間として、全国でさまざまな行事が行われている。
(特集記事)
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・千葉オイレッシュ株式会社・千葉市地球温暖化対策地域協議会(ちばし温暖化対策フォーラム)









